あなただったんだ
私、木原 奈菜と本多 悠也は、3年前、桜の季節に出会った。同期入社の中で、キラキラ光って見えた悠也。そんな悠也から、夕食に誘われたときは、夢かと思った。私がディズニー好きなのもあって、ディズニーランドやシーは何度も行った。でも、聖子ちゃんの「赤いスイートピー」じゃないけど、出会って半年たっても手も握らなかった。何度目かのディズニーランド企画で、お泊りの話が出て。そのあと、私が、「ね、手、つなごうよ」って言ったんだっけ。

思い出すと、涙があふれてくる。あったかかった、手の温もりも、悠也の匂いも、怖いくらいに覚えてる。そっと、私の肩を抱くしぐさも。

NAP CAFEで、宮田豊を待つあいだ、心の中は悠也でいっぱいだった。

「ごめん、待たせちゃったね」

私の2つ年下の豊は、やっぱり悠也と比べるとどこか幼い感じがする。秋川夏海さんは、私たちの2つ先輩だから、豊は4歳年上の女性と付き合っていたことになる。年上と付き合うタイプには見えないんだけど。

「ううん。考えごとしてたから」

ウェイトレスにカプチーノを頼むと、豊は言った。

「やっぱ、あれかな。夏海と・・・本多さんのこと?」

「うん・・・結婚も考えてるって。正直、びっくりした」

「僕は・・・5年付き合ってたけど」

「そろそろ結婚じゃない?って噂だったけど」

「彼女が、両親に会おうとしなかったんだ。だから、あぁ、その気がないんだな、と。僕も仕事が忙しかったし、ちょっとそっとしておいたら・・・横から奪われた」

豊は唇を噛んだ。
< 2 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop