ゆうかユスリカ
ゆうか編 -1-

2015年5月15日

この世に生まれ落ちた、《私》という存在。


それは肉体という器に、感情と言う名の盾があるだけの、他の動物よりも優れた生き物。


それなのに、深淵を這いずりながら、迷うべき所まで迷って、堕落していくような劣等種でもあるのだ。


私、《名西侑香(なにし ゆうか)》は、どちらかと言えば劣等種に当たるのだ、とふと考える。


生まれてきた意味も分からなければ、愛さえも知らない。


これから先知るようなことがあっても、それは絶対に私の人生の糧にはならないだろうし、私には既にこの2つを知ることに、酷く恐怖感を抱いていた。


何故なら、私は死神ですら赦さないような、大罪を犯してしまったから。


その大罪は、発端から3年が経った今でも、私の精神を蝕み壊していく。


度重なるフラッシュバックと、懺悔の祈りと悪夢が、毎日繰り広げられる私の人生は……本当に地獄だろう。


そんな中でも、私が唯一、現実逃避ができると言っても過言ではない、誇れる趣味があった。


それは、《小説を執筆すること》だった。





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