ゆうかユスリカ
クラノ編 -1-
2015年5月23日
【Side クラノ】
ゆうかが大罪を犯したのは、丁度3年前の冬のことだった。
けれど、俺……倉野翔も、彼女に対して裏切りともとれる大罪を犯していたのだ。
忘れられるはずがない、いや絶対に忘れてはいけないんだ。
俺がゆうかの側にいることで、少しでも彼女の気が晴れるなら、大罪を忘れられるなら、そうするさ。
けれど本当は、側にいることだけでも惜しいんだ。
ゆうかが俺だけに振り撒いてくれる笑顔も、俺が書いた小説を見て涙を流す姿も、全てがいとおしくて。
俺はお前のことが──……。
「……ク……ノ…………」
「……ん~?」
「起き……よ………………クラノ」
「……え……あと5分…………」
「クラノ!!起きないと!!!」
「……うわ!!?
なんだ、どうした!!?」
誰かから耳元で叫ばれたような感覚がして、鼓膜まで響き、思わず跳ね起きてしまう。
その姿を見て、クスクス笑うゆうか。
全く、悪趣味だぜ。
ゆうかは肩に指定のスクールバッグを掛けており、外は夕方を示すように夕焼けのオレンジ色が広がっている。
そうか、俺今日部活が休みだから机に突っ伏して寝てたんだな、ということに気づくともう俺を襲っていた眠気は無くなっていた。
「一緒に帰ろうよ」と異性でありながら照れもなくそう言うゆうか。
俺は「おう!」と言うしかなく、また友達としか見てくれていないという事実に、らしくもなく嘆いてしまう。
それでも誘ってくれるだけましか、と俺も荷物を持ち2人で校門に出ると、ゆうかはふと足を止めた。
「どうした?」
「あの先輩、私たちと同じ伊織坂小学校の人……?」
目の前を見ると、長い髪を靡かせた、特徴的な美人な顔立ちの女性がいた。
確かこの人は、俺たちが小学生時代に《マドンナ》ともてはやされていた人だ。
だからといって俺はその人の周りを囲うこともせず、今でもゆうかの視界に写らないようにさっと彼女の前に立つ。
ゆうかの前にいながらも、ゆうかの声色の変化や、肩の震えは、昔から見ていたから自ずと理解することができていた。
この中学校が私立といえど、通学に時間がかかるといえど、公立の中学校を避けここに入学する人は必ずしもいる。
そしてその人数は、入学から一ヶ月過ぎた今でも、把握できずにいる。
《マドンナ》が2人から通りすぎると、後ろからゆうかのほっとした声が漏れていた。
俺も何事もなかったことに安心し、ゆうかの隣に並ぶように、駅に向かって歩いていく。
「……こ、こわかった……」
「うん、話しかけられなくて良かったな」
俺たちから通りすぎた《マドンナ》は知る人ぞ知る《いじめっ子》で、大罪に繋がるゆうかへの《いじめに加担》していた人物だった。
俺はその先輩の姿を思い出すだけで、反吐が出そうになる。
ゆうかへのいじめは、余りにも壮絶で、一歩間違えれば死に繋がるほど残酷で……トラウマにならなければおかしいようなレベルだったのだから。
ゆうかが大罪を犯したのは、丁度3年前の冬のことだった。
けれど、俺……倉野翔も、彼女に対して裏切りともとれる大罪を犯していたのだ。
忘れられるはずがない、いや絶対に忘れてはいけないんだ。
俺がゆうかの側にいることで、少しでも彼女の気が晴れるなら、大罪を忘れられるなら、そうするさ。
けれど本当は、側にいることだけでも惜しいんだ。
ゆうかが俺だけに振り撒いてくれる笑顔も、俺が書いた小説を見て涙を流す姿も、全てがいとおしくて。
俺はお前のことが──……。
「……ク……ノ…………」
「……ん~?」
「起き……よ………………クラノ」
「……え……あと5分…………」
「クラノ!!起きないと!!!」
「……うわ!!?
なんだ、どうした!!?」
誰かから耳元で叫ばれたような感覚がして、鼓膜まで響き、思わず跳ね起きてしまう。
その姿を見て、クスクス笑うゆうか。
全く、悪趣味だぜ。
ゆうかは肩に指定のスクールバッグを掛けており、外は夕方を示すように夕焼けのオレンジ色が広がっている。
そうか、俺今日部活が休みだから机に突っ伏して寝てたんだな、ということに気づくともう俺を襲っていた眠気は無くなっていた。
「一緒に帰ろうよ」と異性でありながら照れもなくそう言うゆうか。
俺は「おう!」と言うしかなく、また友達としか見てくれていないという事実に、らしくもなく嘆いてしまう。
それでも誘ってくれるだけましか、と俺も荷物を持ち2人で校門に出ると、ゆうかはふと足を止めた。
「どうした?」
「あの先輩、私たちと同じ伊織坂小学校の人……?」
目の前を見ると、長い髪を靡かせた、特徴的な美人な顔立ちの女性がいた。
確かこの人は、俺たちが小学生時代に《マドンナ》ともてはやされていた人だ。
だからといって俺はその人の周りを囲うこともせず、今でもゆうかの視界に写らないようにさっと彼女の前に立つ。
ゆうかの前にいながらも、ゆうかの声色の変化や、肩の震えは、昔から見ていたから自ずと理解することができていた。
この中学校が私立といえど、通学に時間がかかるといえど、公立の中学校を避けここに入学する人は必ずしもいる。
そしてその人数は、入学から一ヶ月過ぎた今でも、把握できずにいる。
《マドンナ》が2人から通りすぎると、後ろからゆうかのほっとした声が漏れていた。
俺も何事もなかったことに安心し、ゆうかの隣に並ぶように、駅に向かって歩いていく。
「……こ、こわかった……」
「うん、話しかけられなくて良かったな」
俺たちから通りすぎた《マドンナ》は知る人ぞ知る《いじめっ子》で、大罪に繋がるゆうかへの《いじめに加担》していた人物だった。
俺はその先輩の姿を思い出すだけで、反吐が出そうになる。
ゆうかへのいじめは、余りにも壮絶で、一歩間違えれば死に繋がるほど残酷で……トラウマにならなければおかしいようなレベルだったのだから。