涙の数だけ
『新垣!ちょっと来い』
問題は突然降ってきた。
夕飯の席で新垣の班の女子が2人いないことに気がついた。
「洋子とマリのことですよね?」
さすが新垣。
よく分かってるじゃないか。
夕飯の席にいない2人とは三木と美輪 マリ(ミワ マリ)
「泣いてます、今。
岡田先生が慰めてくれてて…」
少し意外だった。
こういうのは新垣が慰めるものだとばかり思っていたから。
「最初はあたしが慰めてたんですけどね…
岡田先生にご飯食べてらっしゃい、
って怒られちゃいました」
え…?俺、今口に出してないよな?
まさか、俺の心の中見透かした…??
『そうか。原因はなんだ?』
なるべく平然を装う。
内心は悔しくて仕方なかったけど。
「それがよく分かんないんですよね…」
はぁ~と、溜め息をつく新垣は絶対13、14歳じゃないだろう。
なんてバカげたことを考えてみる。
それから席に戻った新垣は机の周りをうろちょろして、
みんなの世話をする。
箸配ってみたり
配膳してみたり
ボケたヤツ相手にツッコんでみたり。
ただ、その表情は今までに見たことのないもので。
言葉には言い表せない何かがあった。
でもそのことには誰も気づいてなくて。
俺はお得意の見て見ぬフリをする。