涙の数だけ
「なんでもないんです、ホントに」
抱きしめそうだった。
涙を堪える彼女を抱き締めたかった。
『なんでもないワケないだろ』
そう言うと新垣の瞳から涙が零れる。
でもやっぱりそれはすぐに無理やり止められる。
「いや…ホントになんでもなくて」
ついには新垣は俺の目を見つめてそんなことを言う。
あまりの申し訳なさに涙が零れた。
鬼教師という仮面が、外れてしまった。
メガネを取って目頭を抑える。
「そんな…先生まで泣かないでくださいよ」
少し笑う新垣は俺のなんかよりずっと大人で。
励まさなくちゃならない俺が励まされている。
『ごめん…お前の力になってやれなくて。
俺はお前の担任なのに…
何もお前にしてやれなくて。
ごめん…』
俺はとにかく謝った。
涙を堪えようとする。
でもそれは俺にはできなくて。
頬に涙がつたった。