涙の数だけ
「先生は、やってくれてます。
あたしこそ、先生に申し訳ないです。
心配なんてかけちゃって…」
その言葉に涙の勢いは増した。
少し眉を下げて笑う彼女は
「泣かないで下さいよ…」
なんて言っていて。
彼女はやっぱり無理をしてる。
一言喋るたびに目頭に手をやる。
鼻をすする。
零れたそうな涙は瞳に浮かんだままで。
『我慢…するなよ』
鼻声になっている自分に気がついた。
「あたたしの我慢なんて全然です。
葵のほうが我慢してます。」
さっき人と比べるな、と言ったのにもう人と比べてる。
どこまで格好つけなんだ、新垣
時計に一瞬目を走らせた新垣は
「じゃ、これで」
アイツはもう、涙は零さなかった。
そして俺に背を向け階段を昇って行く。
『…………新垣!!』