涙の数だけ
『新垣…泣いたんだ。
原因は誰にも分からない。
でも、今ものすごく笑ってて。
俺にも話してくれなくて。
アイツだけに頼りすぎたのかもしれない。
そんなことを思うと申し訳なくて俺、泣いたんだ。
そしたら新垣、俺を励ますんだよ。
『泣かないでくださいよ』って。
紗智…俺はどうすればいい??』
俺のこんな弱い部分を見せられるのは紗智だけで。
でも新垣はきっと、誰にも弱い部分を見せられずに一人で頑張ってるんだ。
「できることなら私、ゆずちゃんと話がしたいわ」
今の紗智の声は危ない。
言い出したら聞かない声になってる。
そのことを知っている俺は電話を繋げたまま新垣の部屋に向かう。
2回ほどノックするとスウェット姿の新垣が出てきた。
「先生…消灯時間過ぎてますよ」
なんて言う新垣の目はランランと輝いていて。
寝る気なんてゼロなんだ、と思った。
『お前と話がしたい、ってヤツがいてな。』
俺は新垣に電話を差し出す。
不審そうな顔をしている新垣は電話に出るとすぐにニヤッと笑う。
相手が俺の妻だと分かったらしい。
それから10分
目を潤ます新垣は紗智と何を話したんだろう。
「おやすみ、先生」
俺に携帯を渡した新垣はそのまま部屋に入って行く。