涙の数だけ
「自分自身と葛藤してたみたいよ?
『自分が我慢すればみんな、仲良く過ごせれる。
けど…洋子が許せない。
結局最後は自分だけが犠牲になってそれで済むならそれでいいかな…
そう思ったんです』
ゆずちゃん笑いながらそう言ったの。
どこの世界にただの中学生が自分を犠牲にして
みんなの仲を取り繕おうとする子がいる?
どこの世界に笑いながらそんなことを暴露する人がいる?
私…もう声も出なかった。
かける言葉が見当たらなくて黙り込んでたの
そしたらね?ゆずちゃん、言ったのよ
『あたしの我慢が足りなかったせいでたくさんの涙が零れた。
洋子だってマリだって
岩村先生だってみんな…あたしが泣かせたんだ。
こんな風になったのも全部、あたしのせいなのに
誰も…責めないんです。
どうしてもっと我慢しなかったんだ?!
いっそのこと、岩村先生に怒ってもらいたかったですよ。
鬼教師に怒鳴られたら気合い…入るんで。
それなのに先生…泣いちゃうんですもん。
ビックリですよ。
すみません、紗智さん。
紗智さんの大事な人…あたしが傷つけました。
あたしが…泣かせちゃいました』
私、これ聞いて泣いちゃったの
どうしてここまで責任感、持てるんだろうって。
おかしいと思わない?
雄志に怒られたかった、なんてヘンでしょ?
気合い…入れてほしかった、
っておかしいでしょ?
ゆずちゃんの痛み、悲しみ、苦しみ。
私…どれもよく感じられなかった。
感じられたことはたった1つ
ものすごく、強いってこと。
ゆずちゃんは、私より大人で強い、ってこと。
あんな子…滅多にいないわ」
紗智は自分のお茶もいれ、俺の向かいに座った。