涙の数だけ
『ただな、授業中はひどく悲しそうで。
すごく真剣な顔してた。
あ、別に俺の授業を真面目に聞いてたとかじゃないんだけど』
アイツが唯一笑わないのは授業中
新垣の席の周りに女子はいない。
だから笑わなくてもいいんだ。
そう、アイツは気を抜いてもいい休憩時間に気合い入れて
気を抜いちゃいけない授業中に気合いを入れていない。
ただ俺はそれをどうこう言うつもりはまったくない。
だって、そうでもしないときっと新垣は壊れてしまうんだ。
周りには悩みなんてありません、
みたいな顔してるけど内心はきっと違う。
みんなに愛されてる新垣は休む暇もないくらい、
人の悩みを聞き、アドバイスをし、励ます。
俺の教師生活の中で1番、我慢強い生徒だと思う
「私、イヤな予感がします。
今回の野外学習で何かある気がする…」
こういうときの紗智の勘は当たってしまうから怖い。
何も起きるな…
起きちゃいけない。