涙の数だけ
「あ、ヤバイ!!
部屋の鍵、忘れた!」
夜班長会が始まる10分前、
そんな声がして新垣が廊下を走る。
アイツ、しっかり者なのにどっか抜けてるところがあるんだよな。
なんて頭の隅で考える。
10分前行動をちゃんと守っているのは新垣の班
きっと新垣がいつもみんなの重い腰を上げてるんだ。
ったく、つくづくすごいヤツだ、新垣ゆずは。
『1日目、無事に終わって何よりだ。
明日からも気を抜かないように。
で、連絡な』
そこから連絡事項を話していく。
俺って絶対、怖いとか思われてる…よな。
自分でも思うときがある。
分かってるくせに、直せない自分がイヤで仕方ない。
俺だってなりたくて鬼教師になってるワケじゃないんだから。
心の中じゃ生徒と笑いながら話せたらどれだけいいだろう
と、考えている。
……らしくない、な。