涙の数だけ




「あ、ヤバイ!!

部屋の鍵、忘れた!」


夜班長会が始まる10分前、
そんな声がして新垣が廊下を走る。

アイツ、しっかり者なのにどっか抜けてるところがあるんだよな。

なんて頭の隅で考える。


10分前行動をちゃんと守っているのは新垣の班

きっと新垣がいつもみんなの重い腰を上げてるんだ。


ったく、つくづくすごいヤツだ、新垣ゆずは。



『1日目、無事に終わって何よりだ。

明日からも気を抜かないように。


で、連絡な』


そこから連絡事項を話していく。

俺って絶対、怖いとか思われてる…よな。

自分でも思うときがある。



分かってるくせに、直せない自分がイヤで仕方ない。

俺だってなりたくて鬼教師になってるワケじゃないんだから。



心の中じゃ生徒と笑いながら話せたらどれだけいいだろう

と、考えている。


……らしくない、な。







< 9 / 38 >

この作品をシェア

pagetop