綺麗事
「待って!違うの肇くん!鈴張さんは助けてくれたの!!」
そう叫んだのは眞衣だった。
「は?」
ポカンと間抜けな顔をする肇。
「だから、鈴張さんが助けてくれたの。苦しそうだから離してあげて!」
眞衣にそう言われて肇は漸く理苑の胸ぐらを離した。
そのとたん、理苑の体は重力に逆らわずに床にペタンと膝を着いた。
「ヒューッゲホッケホッ」
深呼吸して落ち着けようとするがそれも儘ならない。
「ちょっ、鈴張さん吸入器は!?」
そう言って理苑に駆け寄ってきたのは葉月だった。
理苑の背中を擦りながら理苑がポケットから取り出した吸入器を理苑の口元に持っていく。