『先生の色』〜桜の下で始まった恋は、色を変える〜
今日も私は
窓から外を見て景色を描いた
「先生、次いつ学校行きますか?」
「んー、なんで?」
「ずっと学校に行ってないから
桜の絵、描いてない…
早く仕上げなきゃ…」
「立花さん、
前に、想像で描いてるって言ってたじゃん
…
空の色も桜の色も想像だと
日が経てば経つほど憶測になって
脚色されて実際よりいい色になったりするよね
…
まぁ、それが写真とか映像より
いいところだけどね…」
「そうですね…」
「オレも前は好きな絵をずっと描いてたけど
最近は、その時、その時の場面を
スケッチしていくのもいいな…って
そぉすると、そのスケッチを見た時
それを描いてた時の気持ちとか思い出す」
「そっか…
それもいいですね…」
佐々野さんは
たしか、そんな描き方をしてた
「立花さん、絵は想像で描いてるけど
オレの気持ちも想像できる?」
「んー、想像はできるかもしれないけど
当たってるかは、わからない…」
「でしょ…
絵と人の気持ちって似てる
…
想像って自分のいい色にしてしまう
それでいいのかもしれないけどね…」
「先生は、私の気持ち、想像できる?」
「できない」
「じゃあ、言っても、いい?」
「ご自由に…」
先生はアイスコーヒーを飲んだ
「好き…
先生のこと好き…」
「知ってる
それぐらいは、わかる」
「じゃあ、…キスしたい」
先生は何も言ってくれなかった
私は恥ずかしくなって膝を抱えて顔を埋めた
「なんで、オレの気持ちわかるの?」
耳元で先生の声がした
「え…」
私は顔を上げた
「オレもしたかった…」
そう言って先生は、私にキスしてくれた
ーーー
今日のキスはコーヒーの味がした