『先生の色』〜桜の下で始まった恋は、色を変える〜

今日も私は
窓から外を見て景色を描いた



「先生、次いつ学校行きますか?」



「んー、なんで?」



「ずっと学校に行ってないから
桜の絵、描いてない…
早く仕上げなきゃ…」



「立花さん、
前に、想像で描いてるって言ってたじゃん

空の色も桜の色も想像だと
日が経てば経つほど憶測になって
脚色されて実際よりいい色になったりするよね

まぁ、それが写真とか映像より
いいところだけどね…」



「そうですね…」



「オレも前は好きな絵をずっと描いてたけど
最近は、その時、その時の場面を
スケッチしていくのもいいな…って
そぉすると、そのスケッチを見た時
それを描いてた時の気持ちとか思い出す」



「そっか…
それもいいですね…」



佐々野さんは
たしか、そんな描き方をしてた



「立花さん、絵は想像で描いてるけど
オレの気持ちも想像できる?」



「んー、想像はできるかもしれないけど
当たってるかは、わからない…」



「でしょ…
絵と人の気持ちって似てる

想像って自分のいい色にしてしまう
それでいいのかもしれないけどね…」



「先生は、私の気持ち、想像できる?」



「できない」



「じゃあ、言っても、いい?」



「ご自由に…」


先生はアイスコーヒーを飲んだ



「好き…
先生のこと好き…」



「知ってる
それぐらいは、わかる」



「じゃあ、…キスしたい」



先生は何も言ってくれなかった



私は恥ずかしくなって膝を抱えて顔を埋めた




「なんで、オレの気持ちわかるの?」

耳元で先生の声がした



「え…」


私は顔を上げた




「オレもしたかった…」

そう言って先生は、私にキスしてくれた



ーーー



今日のキスはコーヒーの味がした





< 227 / 344 >

この作品をシェア

pagetop