『先生の色』〜桜の下で始まった恋は、色を変える〜

「どっちがいい?」


先生がビールとノンアルコールを持ってきた



「じゃあ、私はノンアルで…」



「じゃあ、オレも…」



先生がグラスに注いでくれた



「先生、海外に行ってた時の話、聞きたいです」



「あぁ…
ホントは…絵の勉強ってわけじゃなかった
美術館とかは行ったりしたけど…」



「じゃあ、なんで?」



「立花さんのこと、忘れようとしてた」



「え…」



「こっちにいたら、また会いたくなるから…」



今日は、聞かなきゃ…



「…私のこと…
…嫌いでした?」



声が震えた



「いや…」



「私は、ずっと…
先生のこと…好きでした

忘れたくなかった…
今でも…好きなのかもしれません」



「…立花さん、酔ってる?」



「ノンアルって、酔うんですか?」



先生はまた

ちゃんと答えてくれない



「だって、オレ…もぉ30だよ…」



「私も、もぉ高校生じゃないですよ…
…先生も、もぉ先生じゃない…

先生、最後に私のこと…
菫…って呼んでくれた?

私の聞き間違えですか?」



あの日のことを
私はまだ昨日のことのように思い出せる



思い出は
いい色に脚色されてるのかもしれないけど…

私の中には
綺麗な色で残ってる





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