縁の下の恋


「やぁぁ!リョウ君、待ってたんだ!」


その声は、紛れもなく、リョウをこの世にデビューさせてくれた恩師でもある、イベント会社の社長の大石哲郎であった。国内外問わずコンサート等の興行を一手に手掛けているトップの存在である。



「ああっ、大石さん…何時も有難うございます。…今日は何か…」



「何かじゃあないだろう!折角大阪に来たんだ。うちに寄らないって訳ないだろう!娘も首を長くして待ってるんだ。それとも…約束でもあるのか?」



「ええっ、実はちよっと…」


結城達の方を見る。



「なんだ!あんな奴等と約束か?君は、判ってるな?あんな奴等と付き合う必要は無い!さぁさぁ!時間の無駄だ!わしの車に乗って……」



結城の元に駆け寄った。耳打ちをしてほんの少し一理の方を見た。


「じゃあ、結城さん頼みます!ホントにすみませんが」



足早にリョウは去って行った。
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