縁の下の恋
世界の違い
リョウは、あの大石は最大苦手な相手であった。
しかし誰よりも早く自分を見いだしてくれ、今に至っているのは大石のお陰であることは事実だった。
挙げ句に大石にも言えずにいる最も嫌なことがある。
大石の豪邸に着いてしまった。
家の中からけたたましい声がやはり聞こえてきた。
「リョウ!!久し振りぃぃ!由衣(ゆい)待ちくたびれちゃったぁ!ねぇ、ママ?」
「そうね!リョウさんは、今じゃ、大阪に来た時ぐらいだものね?」
「そうだな!…今日も、わしが連れて来なけりゃ、何処かへ行かれちゃうところだった。」
「やだなぁ!リョウったら、由衣が待ってるって、知ってるでしょ?」
(こうも、3人に畳み込むように言われたら何を言う気も無くなる…時間がひたすら過ぎることを願う)
「あらあら、リョウさんは、コンサートでお疲れ気味のようね?由衣ちゃんリビングに早くお通しなさい!直ぐにお酒の準備するから!待ってて貰って!」
「ああっ、あのぅ、明日もありますから、早めに失礼しますので…今日は…」
リョウは、一時も早くホテルへ帰りたかった。
正直に言えない自分が何時ももどかしかった。
このある意味脅しともとれる3人の態度や言葉はリョウにとっては、無駄なことにしか思えなかった。