縁の下の恋
それ以上居ることも無いと思い大石と由衣に別れを告げ、その場から立ち去った。
時計を見ると11時過ぎていた。
もう面会は、無理かもと思いながらも、向かわずにはいられなかった。
一理の意識はまだ戻っていなかった。
しかし、集中治療室からは出て、ナース受付カウンターの前の病室に移されていた。
「ご両親が今帰られたところで…ほんの暫くでしたら…どうぞー」
「すみません!有難うございます。」
ようやく辿り着けた。
そっと側に駆け寄った。
思わず…いちりの頬をそっと触ってみた。
「痛かったろ?……腕もこんなになってしまって…君の大切な身体を、こんなにしてしまって…辛いよね?ごめんよ!……」
涙が頬を伝った。
父が亡くなって以来泣いたことなど無かった。