縁の下の恋
こんな時間に…大丈夫だろうか?
恐る恐るドアを開けると…
お客は、もう皆帰ってしまったあとらしく従業員が後片付けをしていた。
ホールの責任者らしき人が一理の元にやって来た。
一理の顔を覚えてたらしく、
「〇〇〇〇〇…(何かお忘れ物でも?)」
一理は流暢な中国語で、
「いえっ、そうではなくて…あそこに置いてあるピアノをちよっと弾かせてもらえたら、と…?」
「〇〇〇〇〇〇(ああっ…調律してないですが、それでも宜しければ、後片付け終わって店を終うまででしたら、どうぞ…)」
「有難うございます!仕事終えられたら、合図してください!」
一理は久し振りにピアノの前に立った。
♪♪♪♪♪♪
♪♪♪♪♪♪
何故…乙女の祈り♪
片付けをしていた従業員の手が一瞬止まった。
レストランの中が一理のピアノの音だけが響いていた。
リョウのコンサートへ初めて行き、リョウをあんなにも間近で見れて、
あの日の出来事が走馬灯のように一理の胸に広がっていく。