縁の下の恋


~リョウの挑戦~ (インアジア)

高瀬にはすべて任せてあった為に、香港のあと何処へ行くのかはリョウには聞かされていなかった。



香港での二か月はとても今までに経験することの無かった貴重な出来事が多かった。



殆どが小さな会場でのコンサートばかりであった。



わざと高瀬はそういう会場を選んだのだとリョウは思っていた。



それが有り難かった。



今のリョウにとっては、最高に楽しんで弾くことが出来たのだから。



しかも、お昼のコンサートばかりでは無く、ある時は、ディナー付きのミニコンサートなどあり、身近にお客様が居るところでの弾き語りは、驚きもありまた新鮮でもあり、改めて自分のピアノを考えさせられたりもした。



大きい会場やセットや、自分の名前や名声ばかりをこだわる人間が一切居ない場所で、丸裸の自分だけが、お客様の前に立って演奏する…



その何でもないことが、今まで出来なかっただけなのだから。
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