縁の下の恋


ある時などは、出口から帰るのを待ってくれていた客がいつの間にか花束を用意して、言葉が解らないなりに喜んでくれたことは、表情で理解出来た。



帰り道は、何故か言い様の無い感動で、気持ちが溢れそうになっていた。


今まで沢山の人達ばかりにこだわって居た自分が小さく思えたりもした。


いつもは電車で帰るのを止めて、貰った花を抱えたまま想いをかみ締めながらアパートまで歩いて帰った。


こんな自分を……


観てくれるのだろうか…



ふとっ、心の中で呟いてみた。



こんな自分を真直ぐに観て何かを感じてくれるのだろうか…



全く汚れのない純粋な心の持ち主…


「いちり……今何処で、どうしているんだろ。」



この広い世界の何処かで、何かを見付けているんだろうか?
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