縁の下の恋


リョウは高瀬がどんな会場を用意してくれているのかが妙にわくわくした気持ちで一人簡単な荷造りに没頭していた。



約二年前の北京での自分を思い出していた。



自分の心の奥深くに居着いてしまっている想いを打ち消すかのように、自分の音楽に奢り芽を閉ざしていたあの頃…



今は、すぐ隣りに住む人でさえも、いとしく想えたりもする。



朝♪何気に聞こえてくる鳥の囀りに耳が反応したりもする。



この広い世界の何処かにきっと必ずこんな自分でも、素直な心で見つめてくれる人が居てくれる。今はそれだけで良いと思っていた。



北京での仕事も、また新たな自分を見出だせると信じていた。



今回の高瀬の手配は以外に早く済んだ様子で、住む場所へ引っ越すのには時間は掛からなかった。



高瀬によると、一か月は滞在するらしい。



以前は、まるで街中へ出向くことはしなかったから、今回は新たな気持ちで北京を楽しむことが出来ると信じていた。



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