縁の下の恋
中国語で畳み込むように言ってくる従業員に戸惑っていると、ホールリーダーのような男性が、片言の日本語でテーブルに案内してくれた。
言葉はわからなくても何となく通じるもので何とか食事をすることができホッとし、ようやく店内を見渡し隅の方に隠れるように置いてあるピアノに気がついた。
ピアノに目が奪われている自分に先程のホールリーダーの男性が近づいて来た。
どうやら弾いてみるか?と言っているように思えた。
店内には何組かの客が食事をしていた。
大丈夫か?と身振りで聞いてみたものの何が気に入ったのか、体をピアノの前まで案内をしてくれ、座って弾いてくれと言ってるのが理解出来た。
お客の雰囲気を少し眺めどの曲が良いか咄嗟に決めた。
今まで聞こえていた客の話し声がピタリとしなくなった。
曲が終わり立ち上がろうとしたリョウの側に何組かの客が駆け寄って来た。
言葉が解らないのが残念ではあったがリョウは早々に帰ろうとしたその時…
ホールリーダーの男性に呼び止められた。
片言の日本語でまた何時でも弾きに来て欲しいと必死で頼んできた。
そのあとも必死で何かを訴えているのだが言葉の解らないリョウには何を言っているのか解らなかった。
そのことはリョウの頭からはなかなか離れることは何故か無かった。
また身体が空けばピアノを弾きにくれば解ることだろう…