縁の下の恋
面接には、一理の他はすべて若い男性が来ていた。
まるで異星人でも見るような目で、その男性達は、一理をジロジロと見た。
確かに一理が、今受けようとしている仕事の職種は、到底女性は考えもつかないものだから、仕方がないのだけれど…
遂に一理の名前が呼ばれる。
(トントン~ドアをノックし、返事を確認してから、中に入る)
一礼をし、用意してある椅子に腰掛ける。
役員らしき年配の男性2人と、中年の男性2人が並んで座っていた。全員が同じように驚いていた。
「君は……間違なく、(履歴書を見ながら、写真を何度も確認して)松平一理君……女の……女性でしたか!んんっ…にしても、照明だったり、音響だったり、様々な仕事があるわけだけど…」
(やはり、そう訊いてきたか!)
中年の男性が続けて訊いてくる。
「君は、外国語大学を出る訳だから、此所に来るのは、ちよっと畑違いな気もするけど…(履歴書を見ながら)第二種の電気工事技師の資格を持っているってのは、間違ない?へえっ!変ってる女性(ひと)だなぁ!何か訳あるの?」
「はいっ、ただ好きだからです。」
「頭でするお勉強と現場は、また違うんだよ!お嬢さん!遊びじゃあないからね、この仕事は…まぁ…手元ぐらいは出来るのかな?お嬢さん!」
「勿論…最初はどんな仕事からでも頑張ります!体力にも自信ありますから!」
「なかなか…負けず嫌いなお嬢さんのようですね?此所へやって来ただけでも、勇気がいったはずですからね。」
と、一番年配と思われる男性が唯一優しいまなざしで一理を見てくれた。
一通りの鋭い質問責めが終わり部屋を退室し、後は後日郵便にて案内する旨を聞き全員帰された。