王子様に恋をした
お支度を済まされたお父様お母様お兄様と連れ立って、舞踏会が行われる伯爵のお屋敷に向かう為、馬車に乗り込みました。

正装に身を包まれたお父様とお兄様、そしてなにより瞳と髪色にお似合いの色めのマーメイドラインの美しいドレスを着こなしたお母様。

私は貴族としては普通の顔立ちではありますが、お父様もお母様も そしてお兄様もとても綺麗なお顔立ちをしていらっしゃるのです。

私は幼い頃からそれが自慢ではありましたが、同時にコンプレックスでもありました。

もう少し…もう少しだけ、お母様の大きな目と同じだったら……
もう少し…もう少しだけ、お父様と同じすっととおった鼻だったら……

ないものねだりなのは分かっていても、両親の良いところを貰っていたらと思っておりました。

同じ兄妹なのに、お兄様はとても綺麗なお顔立ちに加え、頭脳明晰でもありました。

今の私と同じ歳の頃には、既にお父様のお仕事を手伝っておられ、周りの大人の方々からも信頼されておられたと思います。

そんな家族に囲まれていれば、所謂落ちこぼれな気持ちにもなりがちなのですが、両親もお兄様も私の事をとても愛し大切にして下さっていたからこそ、これまで難しい勉強も頑張ってこられたのでした。
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