王子様に恋をした
何も仰らないロイド様を不思議に思い小首を傾げて見上げると、首まで真っ赤になっておられたロイド様と、それをご覧になったリュークアッセンドラ殿下が肩を揺らして笑っていらっしゃいました。

「ロイ、ちゃんと挨拶しないとダメだろ?アイリーン嬢が困ってるぞ。」

「う…うるせぇ!リューク。」

お二人の打ち解けた会話から、お二人の仲の良さを伺い知る事が出来ましたが、それにしてもロイド様のお話ぶりは、なかなかどうしてなものがありました。

お二人のご様子に、私の顔は余程びっくりしていたのでしょう。殿下が、

「ほら見てご覧よ。アイリーン嬢、固まっちゃったじゃないか。ロイのせいなんだから、ちゃんとアイリーン嬢に見とれてないで。しっかりしろって!!」

そう仰いロイド様のお背中をバシッと叩かれたのでした。

「っ…痛ってぇ!リュークお前…」

相当お痛かったのでしょう。ロイド様の双眼には薄ら涙が浮かんでいらっしゃいました。

それもそのはず。殿下は既に王太子として執務にあたっておられるばかりでなく、剣術のお稽古も毎日欠かさずなさっていらっしゃるのです。

当然お身体には鋼のように固くしなやかな筋肉が付いていらっしゃるのでしょう。勿論それ等は剣を持つ腕にも付いていらっしゃるわけで。そんな方に背中をぶたれたら、それはそれは普通の方なら悶絶ものなのに違いないと思います。

ですが、ロイド様は涙が浮かべる程度でお済みだったのは、きっとロイド様ご自身も殿下付きの宰相として鍛錬に勤しんでおられるのだと思いました。
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