戀のウタ
 その言葉を聞いて恭介の気配が遠退き、トントントンと階段を降りる足音がフェードアウトしていく。

 お母さんに挨拶している恭介の声を遠巻きに聞きながら、アタシは項垂れ目の前のドアに頭を寄せて座り込んだ。

 なんだか急に胸の中にあった何かが消えたような気がする。
 大きく占めていたものが無くなりぽっかり穴が空いたような感じ。
 たぶん、喪失感というものなんだと思う。

 寂しいとか辛いとか言える立場じゃない。
 全てはアタシが望んだことだから。


「きっと、これでよかったんだ」


 真っ暗な部屋でアタシは祈るように小さく呟いた。
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