戀のウタ
 ふいに恭介の顔が頭の中を過ぎりさっきまでのドキドキが胸の中から消え去る。

 それに気付いたように白河先輩はアタシの頭を撫でていた手をぐっと自分の胸に寄せた。


 厚い胸板が迫りバニラビーンズの香りを押し退け爽やかな柑橘類の香りがアタシの鼻に、心に届く。
 そして幽かにアタシの耳に白河先輩の心臓の音が聞こえた。

 トクン、トクンと心地よいリズムと一緒に低く優しい声が上から降り注ぐ。


「なんかあったら俺のとこに相談に来い。松永1人くらい受け止めてやる懐ぐらいあるから」


 力強く居場所を与えてくれる言葉だと思う。
 だけど言葉限りじゃない。


 本当にそうしてくれる、アタシを受け止めてくれるだけの確信の持てる言葉にアタシは白河先輩の腕の中で静かに「はい」と答えて頷いた。


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