戀のウタ
 俺はそこまで算段すると校門を出て大通りを右に曲がった。
 同じ制服を着た生徒の間を縫うように走る。

 この道は平坦だし遮蔽物も少ないので走っていてもすぐにミチルを見つけられるだろう。


 ミチルの歩くペースを思い出し、逆算してどの辺りにいるか暗算する。

 あのテンションならとぼとぼ歩いてるんじゃないかな…。
 それならコンビニのある交差点の辺りで追いつけるはず!

 アンドロイドとしてでなく『中野恭介』として、ミチルとの経験を根拠にそう思う。

 教室から出てずっと走ってるので流石に堪えるけどそんなこと言ってる時間もないし、休憩する時間も惜しい。

 頬を切る風を感じながら俺は早くミチルに会う事だけを考えた。

 会ってちゃんと話さなきゃ。

 会話が弾まなくても気まずくてもいい、とにかく今はちゃんと会って話すことが一番なんだ。
 
 話す内容云々なんて頭に用意出来ていないけど…。
 ミチルを捕まえたらちょっと寄り道して…そうだ、『Limelight』に一緒に行こう。 
 ミチルの好きなエクレア買って2人で食べながら昔話でもすればいつもみたいに戻れる気がした。

 同じ制服の生徒も疎らになり俺達の家に向かう道に入る。


 俺の予測したコンビニまであと50メートル強。
 そのちょっと手前に人影を見つけた。
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