戀のウタ
「え――なんで…」
普通に考えてこの距離じゃミチルの声は聞こえないはずだ。
昼下がりとはいえそれなりに交通量も人の通りもある道で雑音だってある。
元に俺の声だってかき消された。
だけど確実に聞こえたミチルの声に俺は戸惑いを隠せない。
それどころか――
ぼんやりと米粒大にしか見えていなかった白い車の運転手がぐっとズームで拡大され目の前に現れる。
短く刈り込んだ髪に健康的な肌色の20代半ばぐらいの男だ。
さっき聞いた「愁にぃ」という言葉を思い出す。
ひょっとしたらミチルの通っていた道場の『白河先輩』かもしれない。
俺もミチルに誘われて一緒に空手をはじめたけど元々こんな体質だし合わなくて3ヶ月ぐらいで辞めた。
その時に練習を見てもらった覚えがあるが…顔は覚えていない。
だけど俺の記憶にはないが辞めてからもミチルから白河先輩絡みの話を聞かされているし…。
靄がかかったようにはっきりとしない昔の記憶に俺は内心舌打ちする。
なんとかして古ぼけた記憶を引きずり出そうと思った瞬間、頭に電流が走ったような感覚に襲われた。
普通に考えてこの距離じゃミチルの声は聞こえないはずだ。
昼下がりとはいえそれなりに交通量も人の通りもある道で雑音だってある。
元に俺の声だってかき消された。
だけど確実に聞こえたミチルの声に俺は戸惑いを隠せない。
それどころか――
ぼんやりと米粒大にしか見えていなかった白い車の運転手がぐっとズームで拡大され目の前に現れる。
短く刈り込んだ髪に健康的な肌色の20代半ばぐらいの男だ。
さっき聞いた「愁にぃ」という言葉を思い出す。
ひょっとしたらミチルの通っていた道場の『白河先輩』かもしれない。
俺もミチルに誘われて一緒に空手をはじめたけど元々こんな体質だし合わなくて3ヶ月ぐらいで辞めた。
その時に練習を見てもらった覚えがあるが…顔は覚えていない。
だけど俺の記憶にはないが辞めてからもミチルから白河先輩絡みの話を聞かされているし…。
靄がかかったようにはっきりとしない昔の記憶に俺は内心舌打ちする。
なんとかして古ぼけた記憶を引きずり出そうと思った瞬間、頭に電流が走ったような感覚に襲われた。