戀のウタ
 今までなら求めれば、手を伸ばせばすぐに手が届いていた距離だったのにミチルがカイロスを知ってからずいぶんと遠い距離になってしまったような気がする。

 いや本当は結構遠い距離だったのかな?

 まるで頭の上の真っ青な青空にふわふわと浮かぶ白い雲を掴もうとしているような感覚だ。
 掴めそうに見えて絶対に掴めない、そんな距離がもどかしい。


「ミチル…ごめん」


 もどかしさから出てきた言葉は何故か謝罪の言葉だった。
 自分で言っておいて何に対してのごめんなのか分からない。


 だけど今の気持ちを表すには1番的を得た言葉だと思う。
 俺は釈然としない気持ちを溜息として吐き出しラボへ向かった。

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