戀のウタ
「お前が何しでかしたかしらねぇけど管警局からの呼び出しなら人事関係かもよ?」

「はぁ」

「お前、地元にお袋さん1人残してるから帰れるように希望出してんだろ?」

 
 確かに森川の言う通り地元に母を1人残していてそれが気掛かりで地元勤務を進言している。

 だが仮にそれが叶ったとしてもわざわざ管警局まで呼び出されるものだろうか。

 白河は腑に落ちない様子で考え始めたがそれはすぐに森川の言葉で中断させられた。


「なんにせよ行かなきゃわかんねーんだからとっと行ってこいよ」


 そう言って森川は回していたボールペンをペン立てに放り込むと脇に置いていたスポーツ新聞に手を伸ばした。

 勤務中だろうという指摘は森川の小言が煩いので心の中に留めておく。
 一応、ここの席は表から見えない死角だし、今は一般人の立ち寄りも無い。

 この辺りは割と田舎なので事件らしい事件も起きない平和な地区だから。この程度のことは黙認されている。

 田舎特有の緩慢とした空気に順応している森川を見て白河は自分も多少はそうなるべきかと考えた。

 だが自分には目標がある。
 いや目標と言うよりかは『為すべき事』と言った方が正しい。

 その為すべき事の為にもここはだれずに背筋を正そうと自分に喝を入れた。

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