戀のウタ
「チカ…俺はどうしても知りたいんだ、どんなことをしても。じゃないと俺は前に進めない、どこにも行けない」


 まるで自分の罪を告白し、赦しを乞うように白河は呟く。

 そして目の前にある自分よりも小さく華奢な体に腕を回した。
 折れそうなくらい頼りない体なのに心強い体だと白河は思う。


 千夏は回された腕を感じ慈しみながらその懺悔のような願いを静かに聞いた。


 小さな1DKの部屋に震える声がかすかに響く。

 強くて脆い、だが不屈の決意を持つ男は今日のこの瞬間を最後に『為すべき事』の為に全てを捨てる決意をした。
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