戀のウタ

Friends

 夕暮れのオレンジがかった光がガラス越しにリノウムの廊下を照らす。

 秋の入り口を迎えた夕暮れは里奈が思っている時間よりも早く夜の到来を感じさせた。


 このくらいの時間になれば教室に残っている生徒は少ない。

 最終下校時間に近い学校に残っている生徒は部活動や委員会など目的を持って残っている者ばかりだ。
 だが里奈のように少なからずそれ以外に分類される者もいる。


「はー終わった終わった」


 里奈は腹の底から溜息を吐き出し教室のドアを開けた。

 ドアが開くのに合わせて視界が明るくなる。
 薄暗い廊下に慣れた目が西日で満たされた南向きの教室の明るさに順応しようと瞼を動かす。

 里奈は目を細めながら教室を見渡した。
 つい2・3時間前までは騒がしかったはずの教室はまるで別物のように静かだ。

 一瞬、誰もいないのかと思ったがその中にぽつんと1つ人影を見つけた。
 その人影は彼女の声とドアの開く音に呼ばれたようにそちらへ向く。


「なんだ御手洗か。どうした、こんな時間まで?」

「職員室で進路相談。山内こそなにやってんの?」

「漫画読んでる」

「家に帰って読めばいいのに」

「借り物だし重いしまた持ってくるのが面倒」
 

 山内は里奈に向けた視線を戻すとページを捲った。

 里奈は差し込む西日を右手を掲げて遮ると山内の席へと移動する。
 山積みになった大判サイズの漫画を手に取ると山内の前の席の椅子を引いてそこへ座った。
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