戀のウタ
 ちょっと手を伸ばせば届く距離。
 それがアタシ達の距離だ。

 いつもの、今まで通りの距離だけど昨日の恭介の手のせいで…なんというか今日はこの距離が恥ずかしい。

 珍しくだまりこくったままのアタシに恭介が何か気付いたようで不思議そうに覗きこんでくる。


「ミチル?今日調子悪い?」

「…え!あ、そんなこと無い!いっつも通り!」

「そう?なんかいっつもと雰囲気違うし元気ない感じするし…」


 心配そうに眉を寄せて覗き込んでくる恭介にアタシは大丈夫と重ねる。
 意外とこういう時の恭介は鋭いのでこんな時に困る。
 
 あまりこのネタは引きずりたくなかったのでアタシは別の話題を持ち出して逃げた。


「そう言えば眼鏡は?」

「今日はスペア。帰りに直しに行くよ」


 そう言って恭介は指先で眼鏡のブリッヂを押し上げて答える。
 よく見れば確かにいつもの眼鏡とつるの色やレンズの形が違っていた。


「ホントごめんね、修理どのぐらいかかるの?」

「んー幸いレンズは無傷だったりつるの歪みを直すだけだからすぐかな。修理代もサービスで直ると思う」

「でも植木がクッションになって良かったよねー。直撃だったら完璧粉砕じゃん」

「まぁ俺の日々の行いの良さかな」

「ちょっとそれ本気で言ってんの?」
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