戀のウタ
薄暗い部屋で黙々とデスクワークに勤しむ千鶴の意識を現実に引き戻したのは来客を知らせるインターフォンの音だった。
愛想のない電子音に千鶴はキーを叩く指を止める。
唯一の音源が絶たれた部屋は薄暗さも相まってまるで深海のような無音の空間に変化した。
千鶴は1度ディスプレイから目を離すと眼鏡を外し天井を仰ぎ見る。
指先で眉間をマッサージすると脇にあるボタンを押した。
最小限に抑えられていた灯りが光量を増し、薄暗い部屋に慣れていた目を刺激する。
それと同時に薄暗かった部屋が露になった。
所狭しと置かれた機材の間をまるで蛇が這うように縦横無尽にコードが延びている。
だが最低限の動線と配置のお陰で乱雑感は無い。
しかし機材の物々しさもあって非日常的な空間であるのは確かである。
その非日常な空間の一角、1番ドアから遠い場所に唯一の日常があった。
パーテーション代わりに置かれた高さ1メートル強ほどの椿の絵が描かれた屏風の向こうは千鶴の休憩スペース兼仮眠スペースになっている。
千鶴の私物が多く納められた場所であり、唯一彼女のプライベートが垣間見れる場所だ。
一応、このラボは研究目的で千鶴に宛がわれたものだが彼女が殆ど詰めっぱなしなのもあり研究室でありながら私室に近い役割も担っている。
機密保持の為に内部からの許可が無いと入室出来ない構造になっているので彼女の残り少ないプライベートを守る役割も果たしていた。
愛想のない電子音に千鶴はキーを叩く指を止める。
唯一の音源が絶たれた部屋は薄暗さも相まってまるで深海のような無音の空間に変化した。
千鶴は1度ディスプレイから目を離すと眼鏡を外し天井を仰ぎ見る。
指先で眉間をマッサージすると脇にあるボタンを押した。
最小限に抑えられていた灯りが光量を増し、薄暗い部屋に慣れていた目を刺激する。
それと同時に薄暗かった部屋が露になった。
所狭しと置かれた機材の間をまるで蛇が這うように縦横無尽にコードが延びている。
だが最低限の動線と配置のお陰で乱雑感は無い。
しかし機材の物々しさもあって非日常的な空間であるのは確かである。
その非日常な空間の一角、1番ドアから遠い場所に唯一の日常があった。
パーテーション代わりに置かれた高さ1メートル強ほどの椿の絵が描かれた屏風の向こうは千鶴の休憩スペース兼仮眠スペースになっている。
千鶴の私物が多く納められた場所であり、唯一彼女のプライベートが垣間見れる場所だ。
一応、このラボは研究目的で千鶴に宛がわれたものだが彼女が殆ど詰めっぱなしなのもあり研究室でありながら私室に近い役割も担っている。
機密保持の為に内部からの許可が無いと入室出来ない構造になっているので彼女の残り少ないプライベートを守る役割も果たしていた。