戀のウタ
　がっしゃーん、ばしゃーんと甲高い衝突音と水音が放課後の廊下に響き渡る。


　その音にアタシは嫌な予感…というか嫌な予想が駆け巡った。
　ゆっくりと振り返ったそこには予想通りの光景。

　ひっくり返ったバケツと恭介。
　勿論バケツの水はお約束通り恭介にかかっている。


　周りが「あーあ」という落胆の溜息と「またやらかした！」と茶化す声の二重奏を奏でる。

　アタシはそんな雑音を気にせず持っていたホウキを壁に立てかけ恭介の元へと駆け寄った。


「恭介、怪我ない？」

「だ、大丈夫…」

「ここ拭いとくから早くジャージに着替えてきな」

「ごめん、ミチル。ありがとう」

「あーもういいから早く行った行った！」


　びしょびしょの水溜りの上で水を滴らせ恭介はずれた眼鏡を直す。

　アタシは内心溜息を吐いて恭介に着替えを促すとすぐに踵を返した。

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