戀のウタ
 一応、ここの生徒ではあるがここで誰かに咎められたら不法侵入と言われても反論出来ない。

 だからなるべく静かに、手早くノートを回収して帰ろう。


 そう決めるとアタシは小走りで部室棟の通りを抜けて北棟も走り抜ける。
 教室があるのは南棟の2階。
 もう目と鼻の先だ。

 アタシは走る速度を緩めず南棟に向かい外階段を昇ろうとした。
 だがその前に奥にある明かりに気付いた。

 南棟の奥にある体育館だ。

 他の教室と違い、2階の明り取りの窓から煌々と明かりが漏れている。
 そして体育館の鉄製の分厚い扉越しにガタゴトと物音も聞こえてきた。


 部活にしては時間帯がおかしいし、今日は何か行事ごとで開放しているなんてことは聞いていない。


 もし仮に部活や行事ごとだとしても教員立会いになるはず。

 職員室にも電気が灯り、誰かいるはずだ。
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