戀のウタ
 アタシはそこまで推理すると急に背筋が寒く感じた。
 その後に嫌な、ねっとりとした汗が一筋背中を流れる。

 それと同時にアタシの中で本能が警笛を鳴らし始めた。

 誰もいないはずだという推測の上に説明し難い嫌な感じがする。

 関わらない方がいい、そう本能が主張する。


 ざわざわとした胸騒ぎのような感情が足を重たくした。


 アタシは急に重くなった足を引きずり階段の上がり口にへたり込む。

 自分でも結構強気で怖いもの知らずな方だと思っていたがいざこうやって不可解な現象にかち合うと急に臆病なる。

 それが情けない。


「元々見つからないように、とっととノート取って帰るために来てるんだし…気にしちゃ駄目」


 震える足を叱咤するようにアタシはわざと口に出して自分を奮い立たせる。

 幸いなことに後はこの階段を上がって教室からノートを持ち出すだけだ。
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