戀のウタ
 文字通り「一蹴」だ。
 蹴り倒された男達は数メートル吹っ飛び呻いている。

 そして第2波の黒尽くめの男達は先程の男達のように一蹴されないよう連携を取り絶妙なタイミングで恭介に波状攻撃を仕掛ける。

 しかしすべての攻撃は恭介のありえないくらい早い動きでいなされカウンターで1人2人と倒されていく。

 その人並みはずれた強さにアタシは我を忘れて見入っていた。

 こんな恭介は今まで見たことがない。

 運動も人並み以下で走るのも遅いしドジで段差があったらつまづくような子だ。
 それに喧嘩も弱くて喧嘩があれば殴られても止めに入るタイプ。

 そんな恭介が、戦っている。
 しかも半端なく正確で強い。

 恭介らしくない動きと強さに本当に恭介なのか疑ってみるが目の前にある背中はアタシがよく知っている恭介のものだ。


「氷川さん止めてください!ミチルは関係ない!!」 


 最後の男を倒した恭介が今までの様子を見ていた男に叫ぶ。

 「氷川」と呼ばれた男は鼻で笑うと隣に控えていた白衣の男に向かって手を挙げた。
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