戀のウタ
「その…なんというか」

「あら彼女、目が覚めたのね」


 どうしようとオロオロと恭介が口篭っていると穏やかな女の人の声が割り込んできた。

 アタシと恭介が同時に声がした方を向く。
 ドアを開けて入ってきたのは声に見合った穏やかそうな表情を浮かべる白衣を着た女の人だった。
 たぶん…見た感じ30の半ばを過ぎたくらいの綺麗な女の人。


「千鶴さん」

「恭介君、彼女が幼馴染の「松永ミチル」さんね?」

「…はい」


 恭介に「千鶴さん」と呼ばれた女の人はアタシを見るとにっこりと微笑む。
 大人の女性らしい落ち着きのある笑顔にアタシは思わず「どうも」と頭を下げた。

 恭介の事を下の名前で呼ぶし、恭介も自分より年上の女性に名前でさん付けしているところをみると親しい間柄だという事が分かった。

 なんだかアタシの知らない恭介がいるという事に胸がズキンと痛む。


「あの…すみませんが…」

「ああ、ごめんなさい。紹介が遅れちゃったわね。私は恭介君の担当の三宅千鶴」

「松永…ミチルです」


 アタシが声を掛けると女の人が名乗ってくれた。
 なんだかアタシの名前は知ってるみたいだけどアタシも自己紹介しておく。

 『担当』って言ったけど何の担当だろう?
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