戀のウタ
 やっとその時自分がアンドロイドでもラボにある培養器を使わず人の子宮と受精卵を使って生まれたんだなぁと信じれた。

 親父がプロジェクトチームの責任者だったから…人体実験まがいな出産じゃなかっただろうかと不安は未だにあるけど。


「あ、こんなトコにも」


 部屋に戻って寝巻きのスウェットを脱いでいると二の腕に擦り傷があるのを見つける。

 多分昨日の訓練の時のだ。
 このくらいは普通に直るけど周りに何か言われると面倒なんで俺は時間を『早める』事にした。

 小さく息を吸いぐっと意識を集中させる。
 パリっと静電気のような痺れが一瞬体を通り過ぎるとすぐに一筋の傷は消えた。

 こういう時は時間を操れるというのは便利だと思う。

 と言っても平常時のデフォルトレベルだとこの程度がせいぜいだけど。
 もうちょっと、せめてレベル2の通常モードくらいまで開放してくれてれば体育の成績も良くて何かの競技でインターハイぐらいいけるんじゃないかなぁ。


「ま、あんまり目立っても駄目だしな」


 そう言って俺は自分自身を納得させると手早く制服に着替える。

 そして机に置いてるワックスを取るとざっくり手ぐしで髪を整えバッグを持って部屋を出て再びリビングに向かった。
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