戀のウタ
 とても綺麗だと思って出かけたのに今朝見た鮮やかな色彩はミチルの蔭りと同じく色を失った。


 あんな顔を見た後だとどう頑張っても気分が乗らずその後の授業はずっとぼんやりと過ごしてしまった。

 ぼんやりと過ごす中で考えることはずっと「どうしよう」「なんて言えばミチルがあんな顔せずに済むだろう」、こんなことばかり。


 俺はいつものミチルならどうすれば喜ぶかだけを思い出し作戦を練る。
 駅前のクレープかこの間欲しいって言ってたCDか…それとも何かアクセサリーとかの方が喜ぶか…。

 ミチルの喜びそうなものを次から次へと引っぱり出しそれをもとにどんな言葉をかければいいかを考える。


 いつもなら俺がこんな風に考えていると考えがまとまる前にミチルの方から笑いながら「どうしたの?」と小突いてくる。

 で、俺が何か口に出すより先にいつもの笑顔でわしわしっと頭を撫でて、それで――
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