戀のウタ
「あたしが恭介を守るから、恭介は笑っていればいいの」


 小さな頃からアタシ達二人だけの口癖じみた約束。

 小さい頃からドジだけど温和で優しい恭介の笑顔が大好きで恭介がどんなに虐められて泣いていても私が守ってその都度言っていた言葉だ。


「…うん、そうだね。」


 そう言って恭介はアタシの隣に並んでフェンスに手をかける。


 お世辞にも栄えてるとは言いがたいごくごく普通の街並みを見下ろして恭介が呟いた。
 街を見下ろす恭介の横顔をちらりと見上げて思う。

 そういえばこうやって恭介の顔を見るのに見上げるようになったのはいつぐらいからだろうか?


 中学に入った頃は同じぐらいだった身長はあっという間に抜かれて今や頭1個以上抜かれてしまった。
 顎のラインや喉仏だって男っぽい。

 幼馴染で姉弟みたい、と周りに言ってもどうしても恭介の成長が気になってしまう。

 頼りなくてアタシがちゃんと守ってあげなきゃダメなのに、そんな事を思っているとふいに恭介の口が薄く開いた。
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