戀のウタ
「うん、その…ちょっとやっちゃいけないことしでかしちゃって…」

「昨日のことでなく?」

 
 千鶴さんの言葉に俺は無言で小さく頷いた。

 「やっちゃいけないこと」と言葉を濁したがそんな軽い言葉で片付けれないことだ。

 だけど流石に洗い晒し喋るには抵抗があって俺は曖昧にぼやかした。


 だってミチルに、好きなコに…いくら好きでも殆ど無理やりキスはマズイっしょ。

 今ならマズイと思えるけどあの時はそんな風に思えなかった。
 そんな自分が情けない。
 
 ミチルがあんな顔するなんて、あんなに取り乱すなんて見てて耐えれなかったというのもあるけどそれ以上に頼り甲斐あるミチルが凄く小さく見えて守りたくて。

 特技研に巻き込んでしまった負い目もあるけどそれ以上に折角守れるだけの力があるなら、物理的な面だけでなく精神的にも守りたいという思いが先走って抱きしめた。


 …キスに関しては、まぁ俺もそーゆー年頃だし思わずしてしまった、というのもある。

 何より、誰より守りたい存在だけど…、でもあんなに腕の中で不安げに震えて見上げられたら我慢出来なかった。 

 それこそ生まれた時から一緒に過ごしてきたけどあんな風に抱きしめたのは初めてで。

 すごく女の子らしい華奢で柔らかい体。
 なんとも言えない甘い匂いを嗅いだ時に「もう無理」って思った。
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