戀のウタ
 ずっとずっと、幼馴染としてでなく恋愛対象として意識し始めてから我慢してたけど限界。
 気がついたらキスしてた。

 すごく柔らくて気持ちよくて心臓がこれでもか!ってくらい鳴って壊れるんじゃないかと思った。



 だけどミチルの泣き顔を見た時にはすごく怖くてキスの感動なんて跡形もなく粉砕した。

 そして残ったのは今も続く罪悪感だけ。

 
 本当に、なんで我慢出来なかったんだろうと後悔だけが胸を占拠する。
 ミチルを守るならきっともっと良い方法があっただろうに。

 自分の不甲斐無さと浅慮に黙り込んでいるとその沈黙の科白を読み取った千鶴さんが俺の隣にある空いた椅子にゆっくりと座った。


「恭介君、やっちゃいけないことしたのならすることは1つでしょ?」


 少しの呆れと言い含めるような穏やかな声で千鶴さんが答える。
 優しいけど確信を持った声だった。

 俺は俯いた顔を上げて隣にいる千鶴さんの顔を見やる。
 すると「もう答えはわかってるでしょ?」という顔をされた。


 確かに俺も分かってる。

 だけどあの後にミチルが見せた涙と言われた言葉を思い出すとどうすれば、どう言えばいいのか分からない。
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