佐々木くんの隣



だいたい、どうして私のこの眼の話について疑問を持たないの?
どうして「意味がわからない」って言わないの?

「キミも勇気出して見せてくれたし、俺も見せようかな」

そう言って彼は私にゆっくり近づくと、左腕の袖をまくり手を差し出してきた。

「?」

視線を彼の腕にやると……そこには、痛々しい傷痕が何本か付いていた。
刻むように切り込まれた痕。
一瞬、時が止まった気がした。

「……これ」
「リストカットってやつ?一時よくやってたんだよね」
「…………」

傷痕を見つめながら彼はそう言う。

「いじめに家庭崩壊、もうめちゃくちゃでさ。何回も死んでやるって思った。でも、やっぱり勇気が出なかったんだと思う。傷だけが残って、結局俺は死ねなかった。なんの意味もなかった。」

……これも、嘘じゃない。
左眼が反応しない。
嘘をつかない人なんているの?
……わからない。
わからない、けど……

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