眠り姫は王子に愛される
嬉しそうにしている様子を見ると、説明してくれない憤りも消えていく。
「そもそも志緒はどうして一緒に住むことになったの?私は何も聞いてないんだけど!」
「あれ、そうなの?」
「そうだよ!朝起きて知らない人が居たらびっくりしちゃうからね」
「知らない人、か」
目を伏せて憂いた表情をするから、こちらが困惑する。
だって、今日が初対面のはずだよね?
何か間違えたことを言ってしまったのか、と。傷つけることを言ってしまったのか、と。そんな表情をされてしまったら、どうしたらいいか分からない。
でも、幻かのように一瞬だったので気のせいだったのかもしれない。
「湖宵のお母さんから何も聞いてないんだ」
「聞いてない…」
「じゃあ時間がないから簡単に説明すると、今日から湖宵は僕と同じ高校に通う」
「……納得はしてないけれど、分かった」
「そして、今日から湖宵は僕の家で一緒に暮らすから。」
「……え?」
「それから ───……」
「待って待って…!」
寝起きよりも頭は働いているはずなのに、話について行けなくてオロオロする。この話を平然としてしまう志緒がおかしいような。
そもそも、今日から一緒に暮らすって、志緒がうちに来るんじゃなくて、私が志緒のお家に住むの?どうして?私には変わらずお家があるのに。