眠り姫は王子に愛される
「湖宵、もう寝るの?」
「私が寝ないと志緒も寝ないでしょ?」
「…そういうこと」
「ほらほら」
広いベッドは私一人陣取っても全然埋まらない。
ふかふかのお布団は寝心地に文句はないけれど、しいて言うならば、1人分の体温では心もとない。
先程まで無人だったベッドはまだ冷たくて。
早く温まりたくて、顔まで深く布団を被ると志緒がするり、布団に入って来て、抱きしめてくれた。
「寒い?」
「志緒が来てくれたから平気」
「……本当、離したくなくなること言うね」
「離れちゃやだ…」
「急に何が不安になったの?」
「……志緒は私のこと好き?」
「好きだよ」
「結婚しなきゃいけないから、好きになったんじゃなくて?」
「なるほどね」
そこで少し困った表情をしたのを見逃さなかった。
ああ、ほら、気付いちゃうよ。
志緒がどんなに優しい言葉と紳士的な振る舞いを見せたって。
些細な表情は、ふとした瞬間の空白は、常に距離が近いから見えてしまうもの。
ねえ、私、志緒が好きなんだよ。
いつも私だけに甘い甘い砂糖のような夢みたいな時間をくれる。本当にお姫様になったような気分になれる。ずっと、心がどきどきと音を鳴らす。