眠り姫は王子に愛される





「……私は、嫌だ」

「…嫌?」



途端、少しだけ冷たくなった声音にびくり、目を見開くけれど、志緒は焦点が合わなくなりそうな至近距離になるほど顔を近付けて額同士を当てた。

そして、今度は悲しそうな表情で「嫌?」と尋ねて来る。



「わ、私ばっかりドキドキしてるのは、嫌だよ」

「僕もしてるよ?」

「志緒はいつも余裕そうだもん」

「分かりやすく焦ってたら格好悪いでしょ」

「私はそんな志緒が見たい!」

「えぇ…」

「余裕な志緒は勿論格好良いけれど、全部知りたい」

「…やっぱり、可愛いな」



くすり、小さく微笑んでからまた抱きしめられる形になった。
そのままおやすみの流れになったので、いつか志緒の違う姿を見れたらと願いながら眠りにつくのだった。



「湖宵が不安に思うことは何もないよ」



意味深な笑みを浮かべていたことは彼女は知らない。




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