眠り姫は王子に愛される
その日は結局、日が傾くまで綺麗な庭園を楽しんだ。
勉強を進められなかったけれど、私も久しぶりに志緒とたくさん話ができてとても楽しかった。
主に私の話が尽きなくて、こんなに志緒に話したいことがあったのだと改めて驚くくらい。
志緒は相変わらずにこにこと笑顔を絶やさずキラキラとしたオーラを纏っているから、綺麗な薔薇園も相まっていつも以上におとぎ話の世界の王子様のようだった。
夕暮れを感じて肌寒くなった空を見上げる。
部屋に戻るのが何だか惜しくて、志緒の手をきゅ、と掴んでしまった。
不器用な、指先だけを掴んだ形でも、志緒は優しく振り向いてとびきりの笑顔をくれる。
「まだ話し足りない?」
「わ、私ばっかり話しちゃったから、志緒があんまり話せなかったんじゃないかと…」
もごもごと言い訳をする様も不格好で何だか照れる。
「僕は湖宵の話を聞けるだけで幸せだよ」
「私が聞きたいの!」
「そっか…じゃあまだまだ時間が必要だね」
別に話題がなくなってしまった訳ではないけれど、言い出してしまった手前、引き返せずに押し切ると、やっぱり志緒は優しさで受け止めて、私の意志さえも汲み取ったような返答をしてくれた。