眠り姫は王子に愛される
「湖宵ちゃんはいつでも癒しになるね」
「私、百合ちゃんになりたい…」
憧れの存在。
面と向かって素直に伝えると嬉しそうに顔を綻ばせて、抱きついてくれる。ふわりと華やかな香りが漂って、また憧れが募る。
第一印象から素敵だった百合ちゃん。
常に上品さを感じる笑顔からはお嬢様らしさを感じるのに、1番に話しかけてくれて、庶民の私を馬鹿にすることなく一緒に居てくれる。
ブランドのモデルを務められるほどの美貌を持っていながら、私のような平凡な人間のこともしっかり褒めてくれる。
優しくて、可愛くて、美しくて、強くて、癒し。
何でも持っている百合ちゃんは、私の傍に居るけれど、当然住んでいる世界が違って、勿論向こう側。
お金持ちが集う学校に来て、早数ヶ月。
未だに慣れない私は、きっとこの世界には向いていない。今だけ、志緒の気まぐれが終われば、私はもう足を踏み入れることは出来ない。